医療制度

フランスに在住者の悩み、フランスのめんどくさい医療制度。
日本のように受診から、検査、薬の購入までその場で完結できません。
採血やレントゲンは、処方箋を持って別の場所で行い、その結果を持って医師の診察を再度受けます。
『病院に行く』という表現をフランスで使うと、病院(Hopital,Clinique)のような専門設備がないといけないほどの症状なのかと思われます。
体調が悪くて診察を受ける場合は、『医者(Médecin)の診察をうける』という表現になります。


Médecin traitant かかりつけ医

フランスでは、現在、かかりつけ医制度が採用されている
かかりつけ医(Médecin traitant)は、一般医でも専門医でも何でもOK
条件は、かかりつけ医となる医師が同意するのみ
かかりつけ医を指定することは義務ではないけれど、かかりつけ医の紹介なく専門医の受診をうけるとセキュからの払戻し率が悪くなる(*1)
一般的には、近所のGénéralisteをかかりつけ医として指定する事が多い
変更はいつでも自由に行え、変更に際し、現かかりつけ医に連絡する必要もない

*1)かかりつけ医の紹介なしで受診しても、通常の払戻し率が適用される専門分野もある
詳しくは以下、『専門医』の欄を参照ください

申告方法
1)インターネット申告
かかりつけ医となる医師がインターネットを使って申告
診察時など、お願いする医師がインターネット申告可能であれば、その場で行われる
申告日付けでかかりつけ医として登録されるので、その日の診察もかかりつけ医の払戻し率が適用される

2)郵送申告
申告書formulaire n° S3704を医師と一緒に記入し、管轄のCPAMに送付
ameli.frマイアカウントからダウンロードすれば、本人の情報が記載済みの申告書をダウンロード可能
また、最寄りのCPAMでも入手可能

診察料の払戻し
かかりつけ医を申告した場合、またはかかりつけ医の紹介で専門医等の診察を受けた場合は、通常の払戻し率(*2)が適応される
かかりつけ医を申告していな場合、または直接別の医者の受診を受けた場合(*3)は、払戻し率が30%となる

例えば、Consultation(診察)を受け、23ユーロ支払った場合

かかりつけ医の場合
払戻金額 : 23ユーロ × 70% - 1ユーロ = 15.1ユーロ
自己負担金額 : 23ユーロ - 15,1ユーロ = 7.9ユーロ

かかりつけ医がいない場合
払戻金額 : 23ユーロ × 30% - 1ユーロ = 5.9ユーロ
自己負担金額 : 23ユーロ - 5,9ユーロ = 17.1ユーロ

*2)払戻し率の詳細はセキュリテソシアル-払戻しの欄を参照
 
*3)出張や旅行などで自宅を離れていた場合や緊急の場合は、通常の払戻し率が適用される
この場合、診察医が診断書の該当欄を記入する


Carte Vitale 健康保険証

Carte Vitaleは日本で言う健康保険証のようなもの
診察でも薬局でも、セキュが絡む場合はどこでも提示を求められる  
クレジットカードのようなサイズ、見た目で、チップの中に個人情報が入っている
このCarte Vitaleのおかげで、診療記録がセキュに自動送信される為、Feuille de soin(診療書)をセキュに送付する必要がない
この場合は、セキュから5日で医療費の払戻しが銀行口座に振り込まれる
逆に、Carte Vitaleがなくとも、Feuille de soin(診療書)をCPAMに送付すれば医療費の払戻しされる

1年に一度Carte Vitaleのアップデートとがセキュから推奨されている
また、引越などの住所変更、結婚、離婚、出産など戸籍上の変更があった場合も更新
アップデートは近所のCPAM、薬局などにあるターミナルで可能


Parcours de soins 診察の流れ

どう考えても効率が悪いと思うフランスの医療制度
体調が悪い場合は、まず一般医(かかりつけ医)のアポ取りからスタート

Généraliste
体調が悪い場合、一般的には、まずGénéraliste(一般医)の診察を受ける(*4)
アポなしで直接行ける場合もあるが、アポが必要な医師も多い
かかりつけ医がいる場合は、まずはかかりつけ医の診察を受ける

フランスでは、一般住宅の一室に診療所があることが多い
複数の医師のいるCentre médicaleでは、受付があり秘書もいるが、個人で行っている場合、直接、待合室で待つというパターンも多い
診療所には、診察台はあるものの、たいした医療設備はない
基本的には問診、触診、視診のみとなる
薬で治まるようなものであれば、薬の処方箋を出されるので、薬局へ行き薬を購入
または、血液検査、レントゲン、エコーなどの検査の処方箋を出されるか、専門医、病院への紹介状を渡される

基本的に秘書がいないので、受診料は、医師に直接支払う
支払方法は、基本的に現金、または小切手
歯科医など高額になる可能性が有る場合は、カードが使える事が多い

*4)特定の専門医を除き、直接、専門医または病院に行く事は例外となる
かかりつけ医の紹介なく専門医の診察を受けた場合、医療費の払戻し率が悪くなる
ただし、以下の専門医は直接アクセスが認められている

Spécialiste
専門医の受診は、基本的に、Généralisteに紹介されて行われる
紹介状に専門医が記載されていることもあれば、専門家のみ指定されてあり、自分で探す場合もある
どちらにしろ、自分でTELをしアポをとる
医師によるが、予約がとれるのはかなり先になる場合が多く、場合によっては数ヵ月後なんてこともある

かかりつけ医の紹介で受診した場合、医療費の払戻しは70%
紹介がなくとも受診可能であるがその場合、医療費の払戻し率が30%となる
ただし、以下に関しては、かかりつけ医の紹介がなくとも通常の払戻し率70%が適用される

・Gynécologue 婦人科
・Médecine dentaire 歯科 
・Ophtalmologue 眼科
・Stomatologue 消化器科
・Psychiatre 精神科(16-25歳の場合)

Analyses et examens médicaux
血液検査、レントゲン、エコーなど、検査の処方箋が出された場合、検査施設(Laboratoire d'analyses médicales、Centre de radiologieなど)に行って検査する
基本的にアポが必要ない場合が多い
検査施設は、医師や薬局に問い合わせたり、インターネットで検索などで探す

Pharmacie
薬の処方箋をもらったら、薬局に行き薬を購入する
セキュで払戻しされる薬は、どこの薬局でも、同じ条件で購入される
ただし、処方箋には、セキュで払戻しされない薬、医薬部外品なども含まれる
また、処方箋に記載されていても、既に持っているなど必要なければ購入する必要はない

Hospitalisation
緊急入院以外の場合の入院は、公立、私立を問わず自由に病院を選択可能
ただし病院では、緊急以外は、紹介状がないと受診できない場合が多い
また、病院も緊急以外は、アポが必要となる
緊急の場合、緊急窓口に行けば治療してもらえるが、待ち時間が長くなる覚悟が必要

入院する場合、受付で入院手続きを行う
その際、Carte VitaleまたはAttestation de droits à l'Assurance Maladieの提示が必要
手続きが完了すると、bulletin d'hospitalisation(入院証明書)を受取る
これをCPAMと勤務先(失業中の場合POLE EMPLOI)へ48時間以内へ送付
これにより入院治療費の払戻しが行われる

退院時には、bon de sortie(退院証明書)を受取るので、これもCPAMと勤務先へ送付
この時同時にArrêt de travail(ドクターストップ)が出された場合、CPAMと勤務先へ48時間以内へ送付


Ordonnances de médicaments 処方箋

処方箋は、一般的には3カ月間有効
処方期間も記載されており、薬の場合、同一の処方箋で最長で1年まで購入できる
眼科医の処方箋は、特記がない限りは3年間有効なので、同一の処方箋で再度購入可能

処方箋は医師から2枚渡される
薬局や検査施設では、処方箋を2枚とも渡し、オリジナル1枚が戻される
薬局の場合は、購入内容を記載してあり、その他の場合は、スタンプ等が押される

一般的に、薬局で薬を購入する際、セキュからの払戻し分を除いた差額のみ支払う(*5)
薬局で全額支払った場合は、処方箋2枚とも戻されるので、Duplicata(コピー)と薬局で受取ったFeuille de soin(診療書)を自分でCPAMへ送付する
検査の場合も同様で、セキュからの払戻し分を除いた差額のみ支払う(*5)

*5)Mutuelle(共済健康保険)があり、Tiers payant(第三者支払)が有る場合は、薬局で支払をすることなく薬を購入することもある


Mutuelle 共済医療保険

フランスで良く耳にするMutuelleというのは、任意の共済医療保険のこと
良く耳にする理由は、フランス人の大半が加入しているから
簡単に言うと、セキュリテソシアルでカバーできなかった医療費を補填する目的で任意加入する保険(*6)
基本的には毎月定額の掛金を払い、医療費がかかった場合、契約内容に応じて自己負担部分が払戻される

また、Mutuelleの契約がTiers Payantになっている場合、薬局や検査施設にはMutuelleから直接支払される為、その部分を支払う必要がない
この場合、Mutuelleから保険加入書が毎年送られてくるので、それを薬局などに提示する

かかりつけ医の診察を受け、23ユーロ支払った場合
セキュリテソシアルの払戻金額 : 23ユーロ × 70% - 1ユーロ = 15.1ユーロ
Mutuelleの払戻金額(*7) : 23ユーロ - 23ユーロ × 70% = 6.9ユーロ
自己負担金額 : 1ユーロ

かかりつけ医の紹介による専門医の診察を受け、30ユーロ支払った場合
セキュリテソシアルの払戻金額 : 23ユーロ × 70% - 1ユーロ = 15.1ユーロ
Mutuelleの払戻金額(*7) : 30ユーロ - 23ユーロ × 70% = 13.9ユーロ
自己負担金額 : 1ユーロ

かかりつけ医の紹介なしで専門医の診察を受け、30ユーロ支払った場合
セキュリテソシアルの払戻金額 : 25ユーロ × 30% - 1ユーロ = 6.5ユーロ
Mutuelleの払戻金額(*7) : 25ユーロ - 25ユーロ × 70% = 7.5ユーロ
自己負担金額 : 30ユーロ - 6.5ユーロ - 7.5ユーロ = 16ユーロ

*6)福利厚生として、勤務先の会社でMutuelleに加入することも多い
この場合、CMUに加入しているなどの特定の条件を除いて強制加入となる
掛金は各会社により条件が異なる(会社50%、本人50%など)
*7)Mutuelleの払戻し率が医療費の100%の場合